21 昔恋したことを、 それが叶わなかったことを、 男は思い出した。 固い戒めが解けるように、過去の記憶を取り戻していた。 昔恋したことを、 それを許されなかったことを、 だから抗ったことを、 そのため多くを傷つけたことを、 多くの悲しみを産んだことを、 男は、思い出した。 彼は想いの人と引き離された。 理不尽な別離だった。 運命は皮肉で、奇跡は起きず、祈りは果てて望みを絶たれた。 男は捕らわれ咎められ、罪人として罰を受けた。 今分かるのは、己がそれを悔いていること。 罪を知りながら犯し、常に罪悪感に苛まれていたこと。 どんなに残酷に、どんなに非道に、どんなに苛烈に、どんなに冷徹でも。 男は常に怯えていた。 これは罪だと知っていた。 これが悪だと知っていた。 男は、恋した相手のために、悪をなしたのだ。 それを正義と思えなかったのだ。 男は、だから罪人だった。 |