24

 少女を町へ帰し、しかし獣は牢へ戻らなかった。
 国を出て、林の隔てた向こうの荒野で、じっと座って耳を澄ませていた。
 やがて鐘の鳴るのが聞こえた。
 それが処刑の知らせだった。
 獣のよく利く耳をもってしても、少女の最期は分からなかった。
 奇跡が起きて、助かっただろうか。
 父親が直前に娘を庇っただろうか。
 それとも。
 最後まで、獣には分からなかった。
 獣は吼えて、吼えて、吼えた。
 喉が涸れても、痛んでも。焼け付いて血を噴いても。
 吼えて、吼えて、吼え続けた。
 喉から音は出なくなる。それでもずっと、吼えていた。
 そうしていつしか息絶えた。